2016年11月02日

サスペンション

サスペンション(懸架装置)は、路面の凸凹による振動やショックをボディにできるだけ伝えないようにする緩衝装置としての機能と、車輪・車軸の位置を決めボディを支える機能、そして車輪を路面に対して押さえつける機能(接地性)を持った自動車の乗り心地や操縦安定性を図るための装置です。

サスペンションは、バネ(スプリング)、ダンパー(ショックアブソーバー)、スタビライザー、サスペンションアーム、ブッシュという部品で構成されています。

バネにはコイルスプリングという渦巻状のバネのほか、板を重ねた格好の板バネなどがあります。どちらのバネも弾力を持ち、バネが伸び縮みしながら振動することで衝撃を和らげます。

コイルスプリング.png リーフスプリング式サスペンション.png

バネは振動によって衝撃を和らげる半面、振動が収まるまでにはしばらく時間がかかります。振動が収まらないうちに次の振動が加わると、振動が不規則になったり、振動が倍増したりしてしまいます。それでは、自動車の走りが安定しにくくなります。そこで、道路からの振動を和らげながら、その振動を素早く収めるための部品ダンパーを使用します。

ショックアブソーバー1.jpg ショックアブソーバー2.jpg ショックアブソーバー.jpg


ダンパーの内部には、オイルの入ったシリンダーと小さな穴の空いたピストンがあります。バネが振動するとピストンが上下動し、中のオイルがピストンの小さな穴を通り抜けます。穴が小さいので抵抗が生まれ、バネの振動を早く収束させます。

スタビライザーはその両端が、左右のサスペンションに取り付けられた1本の鉄の棒で、カーブで車体を傾きにくくさせる機能を持つ部品です。

スタビライザー.gif

自動車が直進で走っているときは、スタビライザーは何の力も発揮しません。左右のタイヤが道路の凸凹を乗り越えると、左右のサスペンションの動きと合わせてスタビライザーも上下に動くだけです。しかし、自動車がカーブに入って車体が傾こうとすると、スタビライザーが効果を発揮します。カーブで車体が傾くと左右のサスペンションは上下逆の動きをします。カーブ外側のサスペンションは縮み、内側のサスペンションは伸びるからです。すると、スタビライザーの鉄の棒がねじられ、その抵抗力でロールを抑えるは働きをします。

サスペンションの構造は、左右輪を1本の車軸で連結したリジッドアクスル Rigid Axle 式(車軸懸架式)と左右が独立して作動できるインディペンデント Independent 式(独立懸架式)の2種類に大別することができます。
リジッドアクスル式は左右輪が1本の軸でつながっているため、左右どちらかの車輪が動くと、反対側の車輪にも上下方向や左右の傾きなどに影響が出てしまいます。一方インディペンデント式はこうした影響がなく、サスペンションの性能を高めやすい方式といえます。

リジッドアクスル式(車軸懸架式)サスペンション

リーフスプリング式サスペンション

リーフスプリング式サスペンションは、車両進行方向と平行に配置したリーフスプリング(板バネ)により車軸を懸架したものであり、リーフスプリングがバネとしての機能のほか、アクスル(車軸)を支えるという機能も兼ねています。構造が簡単でトラック、バスなどの前輪、後輪のサスペンションとして用いられます。

最上右図「縦置き板ばね式サスペンションの構成」参照

リンク式リジットサスペンション

リンク式リジットサスペンションは、車軸の位置決めを数本の棒で行い、スプリング等には位置決めの機能を持たせないサスペンション形式です。
棒は前後左右に働く力のみを受け持ち、鉛直方向の荷重はスプリングで支えられ、車軸は上下方向の動きを許されています。この棒は両端に軸受けやゴムブッシュを持ち、ある程度自由に動きながら牽引力や制動力を車台に伝える働きをするため「リンク」と呼ばれます。
用いるリンクの数によって3リンク式、4リンク式、5リンク式などがあります。
主にFRの乗用車や商用車の後輪に、またクロスカントリータイプの4WD車やトラック・バスでは前輪、後輪ともに使用されています。

3リンク式サスペンション.jpg 4リング式サスペンション.png 5リンク式サスペンション.jpg

トーションビーム式サスペンション

トーションビーム式サスペンションは、左右それぞれのタイヤがトレーリングアームに付けられ、さらに左右のトレーリングアームはトーションビームと名付けられたアクスルで結ばれています。
トーションビームは内部のトーションバー(スプリング)の働きで、ある程度のねじれを許容できる柔軟な構造になっているのが大きな特徴で、左右輪はある程度独立して動くこと(インディペンデントサスペンションのような動き)ができます。
主にFF車の後輪に用いられています。

トーションビーム式サスペンション.jpgトーションビームリヤアクスルの種類.png

インディペンデント(独立懸架式)サスペンション

フルトレーリングアーム式サスペンション

フルトレーリングアーム式サスペンションは、スイングアーム式サスペンションの一種で、アームの回転軸がアクスルより前方にあるトレーリング(引きずるという意味)アームを用いたサスペンションで、アームの回転軸が車両進行方向に対し垂直に配置されたものをいいます。
構造が簡単で、スペースをとらないという利点があり、主にFF車のリヤサスペンションに用いられます。

フルトレーディング式サスペンション.gif フルトレーディングアーム.gif

セミトレーリングアーム式サスペンション

セミトレーリングアーム式サスペンションは、スイングアームが車軸の前方に配置され、スイングアームのピボット軸が車両の進行方向に対して斜めに配置されたサスペンション形式です。
乗用車のリヤサスペンションに多く採用されています。

セミトレーディングアーム式サスペンション.jpg セミトレーリングアーム.png

ストラット式サスペンション

ストラット式サスペンションは、タイヤが上下にスイングできるようにブッシュ(ゴム製の緩衝材)を介してボディに取り付けられた「ロアアーム」とコイルスプリングとショックアブソーバーを一体にした「ストラット」でタイヤを支える構造のサスペンション形式です。

アメリカの技術者マクファーソンが発明したことからマクファーソン・ストラット(Macpherson strut)とも呼ばれています。

構造が簡単で部品点数が少なく、軽量でコストが安いために、現在乗用車に最も多く用いられています。
一方で、タイヤから伝わる振動や衝撃を吸収・緩和する役目を持つストラットが自動車の重量を支えるパーツとしても使用されることで、ショックアブソーバーのスムーズな動きが阻害される場合があり、大型の自動車や出力の大きな車種にはあまり適さないという面があります。

マクファーソン・ストラットサスペンション.jpg ストラット式ショックアブソーバー.png

ダブルウィッシュボーン式サスペンション

ダブルウィッシュボーン式サスペンションは、車軸を支えるアームの形が鳥の叉骨 (Wishbone) の形に似ていることから名づけられたもので、片側の車輪をアッパーアームとロワアームの2つ(Double)で支える構造のサスペンション形式です。

このサスペンションでは、アッパーアームとロアアームのセットで車輪を支持し、スプリングとショックアブソーバーは主に、振動・衝撃の緩和を担当するといった役割分担をしています。
そのため、大型の乗用車やパワーの大きな自動車、またオフロード走行する車種に適しています。
また、ストラット式に対してタイヤが上下に動いたときの角度変化が少ないことも特徴で、スポーツカーやレースカーも主に、この方式を採用しています。

ダブルウィッシュボーン式サスペンション.png ダブルウィッシュボーン式サスペンション2.png

マルチリンク式サスペンション

マルチリンク式サスペンションとは、ダブルウィッシュボーン式の上下一対のA型コントロールアームを複数のリンクで置き換えた形式のサスペンションです。

ダブルウィッシュボーン式をさらに進めて、旋回や加減速などの力によって発生するタイヤの角度変化をあらかじめ設定して、より旋回性能を高め安定して走行できることを目的としたものです。
性能向上の反面、部品点数が多くなり、機構も複雑化し、コスト高にもなります。

マルチリンク式サスペンション.jpg マルチリンク式サスペンション2.jpg

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